一時間の後、先生の邸を辞し、歩して東単牌楼のホテルに向えば、微風、並木の合歓花を吹き、斜陽、僕の支那服を照す。
しかもなお蝙蝠に似たる先生の顔、僕の眼前を去らざるが如し。
僕は大通りへ出ずるに当り、先生の門を回看して、――先生、幸に咎むること勿れ、先生の老を歎ずるよりも先に、未だ年少有為なる僕自身の幸福を讃美したり。
一時間の後、先生の邸を辞し、歩して東単牌楼のホテルに向えば、微風、並木の合歓花を吹き、斜陽、僕の支那服を照す。
しかもなお蝙蝠に似たる先生の顔、僕の眼前を去らざるが如し。
僕は大通りへ出ずるに当り、先生の門を回看して、――先生、幸に咎むること勿れ、先生の老を歎ずるよりも先に、未だ年少有為なる僕自身の幸福を讃美したり。