此処は琵琶湖に臨んだ、ささやかな部落で、昨日に似ず、どんよりと曇つた空の下に、幾戸の藁屋が、疎にちらばつてゐるばかり、岸に生えた松の樹の間には、灰色の漣漪をよせる湖の水面が、磨くのを忘れた鏡のやうに、さむざむと開けてゐる。
――此処まで来ると利仁が、五位を顧みて云つた。
「あれを御覧じろ。
此処は琵琶湖に臨んだ、ささやかな部落で、昨日に似ず、どんよりと曇つた空の下に、幾戸の藁屋が、疎にちらばつてゐるばかり、岸に生えた松の樹の間には、灰色の漣漪をよせる湖の水面が、磨くのを忘れた鏡のやうに、さむざむと開けてゐる。
――此処まで来ると利仁が、五位を顧みて云つた。
「あれを御覧じろ。