すると、夕方、此処へ着くまでに、利仁や利仁の従者と、談笑しながら、越えて来た松山、小川、枯野、或は、草、木の葉、石、野火の煙のにほひ、――さう云ふものが、一つづつ、五位の心に、浮んで来た。
殊に、雀色時の靄の中を、やつと、この館へ辿りついて、長櫃に起してある、炭火の赤い焔を見た時の、ほつとした心もち、――それも、今かうして、寝てゐると、遠い昔にあつた事としか、思はれない。
五位は綿の四五寸もはいつた、黄いろい直垂の下に、楽々と、足をのばしながら、ぼんやり、われとわが寝姿を見廻した。
すると、夕方、此処へ着くまでに、利仁や利仁の従者と、談笑しながら、越えて来た松山、小川、枯野、或は、草、木の葉、石、野火の煙のにほひ、――さう云ふものが、一つづつ、五位の心に、浮んで来た。
殊に、雀色時の靄の中を、やつと、この館へ辿りついて、長櫃に起してある、炭火の赤い焔を見た時の、ほつとした心もち、――それも、今かうして、寝てゐると、遠い昔にあつた事としか、思はれない。
五位は綿の四五寸もはいつた、黄いろい直垂の下に、楽々と、足をのばしながら、ぼんやり、われとわが寝姿を見廻した。