広庭の所々には、新しく打つたらしい杭の上に五斛納釜を五つ六つ、かけ連ねて、白い布の襖を着た若い下司女が、何十人となく、そのまはりに動いてゐる。
火を焚きつけるもの、灰を掻くもの、或は、新しい白木の桶に、「あまづらみせん」を汲んで釜の中へ入れるもの、皆芋粥をつくる準備で、眼のまはる程忙しい。
釜の下から上る煙と、釜の中から湧く湯気とが、まだ消え残つてゐる明方の靄と一つになつて、広庭一面、はつきり物も見定められない程、灰色のものが罩めた中で、赤いのは、烈々と燃え上る釜の下の焔ばかり、眼に見るもの、耳に聞くもの悉く、戦場か火事場へでも行つたやうな騒ぎである。