が、そう云う思い出の内でも、あの御年若な若殿様が、少しも取乱した御容子を御見せにならず、ただ、青ざめた御顔を曇らせながら、じっと大殿様の御枕元へ坐っていらしった事を考えると、なぜかまるで磨ぎすました焼刃の匀いでも嗅ぐような、身にしみて、ひやりとする、それでいてやはり頼もしい、妙な心もちが致すのでございます。
御親子の間がらでありながら、大殿様と若殿様との間くらい、御容子から御性質まで、うらうえなのも稀でございましょう。
大殿様は御承知の通り、大兵肥満でいらっしゃいますが、若殿様は中背の、どちらかと申せば痩ぎすな御生れ立ちで、御容貌も大殿様のどこまでも男らしい、神将のような俤とは、似もつかない御優しさでございます。