そう云う勢いでございますから、日が経るに従って、信者になる老若男女も、追々数を増して参りましたが、そのまた信者になりますには、何でも水で頭を濡すと云う、灌頂めいた式があって、それを一度すまさない中は、例の天上皇帝に帰依した明りが立ち兼ねるのだそうでございます。
これは私の甥が見かけたことでございますが、ある日四条の大橋を通りますと、橋の下の河原に夥しい人だかりが致して居りましたから、何かと存じて覗きました所、これもやはり摩利信乃法師が東国者らしい侍に、その怪しげな灌頂の式を授けて居るのでございました。
何しろ折からの水が温んで、桜の花も流れようと云う加茂川へ、大太刀を佩いて畏った侍と、あの十文字の護符を捧げている異形な沙門とが影を落して、見慣れない儀式を致していたと申すのでございますから、余程面白い見物でございましたろう。