しかしその御文は恙なく、御姫様の御手もとまでとどいたものと見えまして、珍しくも今度に限って早速御返事がございました。
これは私ども下々には、何とも確かな事は申し上げる訳に参りませんが、恐らくは御承知の通り御闊達な御姫様の事でございますから、平太夫からあの暗討ちの次第でも御聞きになって、若殿様の御気象の人に優れていらっしゃるのを、始めて御会得になったからででもございましょうか。
それから二三度、御消息を御取り交せになった後、とうとうある小雨の降る夜、若殿様は私の甥を御供に召して、もう葉柳の陰に埋もれた、西洞院の御屋形へ忍んで御通いになる事になりました。