ふだんから釣の好きな私の甥は、五条の橋の下へ参りまして、河原蓬の中に腰を下しながら、ここばかりは涼風の通うのを幸と、水嵩の減った川に糸を下して、頻に鮠を釣って居りました。
すると丁度頭の上の欄干で、どうも聞いた事のあるような話し声が致しますから、何気なく上を眺めますと、そこにはあの平太夫が高扇を使いながら、欄干に身をよせかけて、例の摩利信乃法師と一しょに、余念なく何事か話して居るではございませんか。
それを見ますと私の甥は、以前油小路の辻で見かけた、摩利信乃法師の不思議な振舞がふと心に浮びました。