その時でさえまだ私には、あの天狗法師を殺そうと云う心算もなし、また殺す方がよいと云う気もあった訳ではございません。
が、どうしても甥が初の目ろみを捨てないのと、甥を一人やる事がなぜか妙に気がかりだったのとで、とうとう私までが年甲斐もなく、河原蓬の露に濡れながら、摩利信乃法師の住む小屋を目がけて、窺いよることになったのでございます。
御承知の通りあの河原には、見苦しい非人小屋が、何軒となく立ち並んで居りますが、今はもうここに多い白癩の乞食たちも、私などが思いもつかない、怪しげな夢をむすびながら、ぐっすり睡入って居るのでございましょう。