私共が天上皇帝を祈りましたせいか、あの恐ろしい幻は間もなく消えてしまいましたが、その代り太刀音を聞いて起て来た非人たちが、四方から私どもをとり囲みました。
それがまた、大抵は摩利の教の信者たちでございますから、私どもが太刀を捨ててしまったのを幸に、いざと云えば手ごめにでもし兼ねない勢いで、口々に凄じく罵り騒ぎながら、まるで穽にかかった狐でも見るように、男も女も折り重なって、憎さげに顔を覗きこもうとするのでございます。
その何人とも知れない白癩どもの面が、新に燃え上った芥火の光を浴びて、星月夜も見えないほど、前後左右から頸をのばした気味悪さは、到底この世のものとは思われません。