でございますから河原が遠くなって、ただ、あの芥火の赤く揺めくまわりに、白癩どもが蟻のように集って、何やら怪しげな歌を唄って居りますのが、かすかに耳へはいりました時も、私どもは互の顔さえ見ずに、黙って吐息ばかりつきながら、歩いて行ったものでございます。
二十九
それ以来私どもは、よるとさわると、額を鳩めて、摩利信乃法師と中御門の姫君とのいきさつを互に推量し合いながら、どうかしてあの天狗法師を遠ざけたいと、いろいろ評議を致しましたが、さて例の恐ろしい幻の事を思い出しますと、容易に名案も浮びません。
でございますから河原が遠くなって、ただ、あの芥火の赤く揺めくまわりに、白癩どもが蟻のように集って、何やら怪しげな歌を唄って居りますのが、かすかに耳へはいりました時も、私どもは互の顔さえ見ずに、黙って吐息ばかりつきながら、歩いて行ったものでございます。
二十九
それ以来私どもは、よるとさわると、額を鳩めて、摩利信乃法師と中御門の姫君とのいきさつを互に推量し合いながら、どうかしてあの天狗法師を遠ざけたいと、いろいろ評議を致しましたが、さて例の恐ろしい幻の事を思い出しますと、容易に名案も浮びません。