別してその御堂供養の当日は、上達部殿上人は申すまでもなく、女房たちの参ったのも数限りないほどでございましたから、東西の廊に寄せてあるさまざまの車と申し、その廊廊の桟敷をめぐった、錦の縁のある御簾と申し、あるいはまた御簾際になまめかしくうち出した、萩、桔梗、女郎花などの褄や袖口の彩りと申し、うららかな日の光を浴びた、境内一面の美しさは、目のあたりに蓮華宝土の景色を見るようでございました。
それから、廊に囲まれた御庭の池にはすきまもなく、紅蓮白蓮の造り花が簇々と咲きならんで、その間を竜舟が一艘、錦の平張りを打ちわたして、蛮絵を着た童部たちに画棹の水を切らせながら、微妙な楽の音を漂わせて、悠々と動いて居りましたのも、涙の出るほど尊げに拝まれたものでございます。
まして正面を眺めますと、御堂の犬防ぎが燦々と螺鈿を光らせている後には、名香の煙のたなびく中に、御本尊の如来を始め、勢至観音などの御姿が、紫磨黄金の御顔や玉の瓔珞を仄々と、御現しになっている難有さは、また一層でございました。