まして正面を眺めますと、御堂の犬防ぎが燦々と螺鈿を光らせている後には、名香の煙のたなびく中に、御本尊の如来を始め、勢至観音などの御姿が、紫磨黄金の御顔や玉の瓔珞を仄々と、御現しになっている難有さは、また一層でございました。
その御仏の前の庭には、礼盤を中に挟みながら、見るも眩い宝蓋の下に、講師読師の高座がございましたが、供養の式に連っている何十人かの僧どもも、法衣や袈裟の青や赤がいかにも美々しく入り交って、経を読む声、鈴を振る音、あるいは栴檀沈水の香などが、その中から絶え間なく晴れ渡った秋の空へ、うらうらと昇って参ります。
するとその供養のまっ最中、四方の御門の外に群って、一目でも中の御容子を拝もうとしている人々が、俄に何事が起ったのか、見る見るどっとどよみ立って、まるで風の吹き出した海のように、押しつ押されつし始めました。