所が或日の事、前に申しました良秀の娘が、御文を結んだ寒紅梅の枝を持つて、長い御廊下を通りかゝりますと、遠くの遣戸の向うから、例の小猿の良秀が、大方足でも挫いたのでございませう、何時ものやうに柱へ駆け上る元気もなく、跛を引き/\、一散に、逃げて参るのでございます。
しかもその後からは楚をふり上げた若殿様が「柑子盗人め、待て。
待て。
所が或日の事、前に申しました良秀の娘が、御文を結んだ寒紅梅の枝を持つて、長い御廊下を通りかゝりますと、遠くの遣戸の向うから、例の小猿の良秀が、大方足でも挫いたのでございませう、何時ものやうに柱へ駆け上る元気もなく、跛を引き/\、一散に、逃げて参るのでございます。
しかもその後からは楚をふり上げた若殿様が「柑子盗人め、待て。
待て。