待て。
と仰有りながら、追ひかけていらつしやるのではございませんか。
良秀の娘はこれを見ますと、ちよいとの間ためらつたやうでございますが、丁度その時逃げて来た猿が、袴の裾にすがりながら、哀れな声を出して啼き立てました――と、急に可哀さうだと思ふ心が、抑へ切れなくなつたのでございませう。
待て。
と仰有りながら、追ひかけていらつしやるのではございませんか。
良秀の娘はこれを見ますと、ちよいとの間ためらつたやうでございますが、丁度その時逃げて来た猿が、袴の裾にすがりながら、哀れな声を出して啼き立てました――と、急に可哀さうだと思ふ心が、抑へ切れなくなつたのでございませう。