それは彼の家の煉瓦塀が、何歩か先に黒々と、現われて来たからばかりではない、その常春藤に蔽われた、古風な塀の見えるあたりに、忍びやかな靴の音が、突然聞え出したからである。
が、いくら透して見ても、松や芒の闇が深いせいか、肝腎の姿は見る事が出来ない。
ただ、咄嗟に感づいたのは、その足音がこちらへ来ずに、向うへ行くらしいと云う事である。
それは彼の家の煉瓦塀が、何歩か先に黒々と、現われて来たからばかりではない、その常春藤に蔽われた、古風な塀の見えるあたりに、忍びやかな靴の音が、突然聞え出したからである。
が、いくら透して見ても、松や芒の闇が深いせいか、肝腎の姿は見る事が出来ない。
ただ、咄嗟に感づいたのは、その足音がこちらへ来ずに、向うへ行くらしいと云う事である。