そこで私は徐に赤いモロッコ皮の椅子を離れながら、無言のまま、彼と握手を交して、それからこの秘密臭い薄暮の書斎を更にうす暗い外の廊下へ、そっと独りで退きました。
すると思いがけなくその戸口には、誰やら黒い人影が、まるで中の容子でも偸み聴いていたらしく、静に佇んでいたのです。
しかもその人影は、私の姿が見えるや否や、咄嗟に間近く進み寄って、『あら、もう御帰りになるのでございますか。
そこで私は徐に赤いモロッコ皮の椅子を離れながら、無言のまま、彼と握手を交して、それからこの秘密臭い薄暮の書斎を更にうす暗い外の廊下へ、そっと独りで退きました。
すると思いがけなくその戸口には、誰やら黒い人影が、まるで中の容子でも偸み聴いていたらしく、静に佇んでいたのです。
しかもその人影は、私の姿が見えるや否や、咄嗟に間近く進み寄って、『あら、もう御帰りになるのでございますか。