しかしこれさへ、座敷の中のうすら寒い沈黙に抑へられて、枕頭の香のかすかな匂を、擾す程の声も立てない。
芭蕉はさつき、痰喘にかすれた声で、覚束ない遺言をした後は、半ば眼を見開いた儘、昏睡の状態にはいつたらしい。
うす痘痕のある顔は、顴骨ばかり露に痩せ細つて、皺に囲まれた唇にも、とうに血の気はなくなつてしまつた。
しかしこれさへ、座敷の中のうすら寒い沈黙に抑へられて、枕頭の香のかすかな匂を、擾す程の声も立てない。
芭蕉はさつき、痰喘にかすれた声で、覚束ない遺言をした後は、半ば眼を見開いた儘、昏睡の状態にはいつたらしい。
うす痘痕のある顔は、顴骨ばかり露に痩せ細つて、皺に囲まれた唇にも、とうに血の気はなくなつてしまつた。