それ以来去来は何をするのにも、この満足と悔恨との扞挌から、自然と或程度の掣肘を感じ出した。
将に支考の眼の中に、偶然でも微笑の顔が見える時は、反つてその満足の自覚なるものが、一層明白に意識されて、その結果愈自分の卑しさを情なく思つた事も度々ある。
それが何日か続いた今日、かうして師匠の枕もとで、末期の水を供する段になると、道徳的に潔癖な、しかも存外神経の繊弱な彼が、かう云ふ内心の矛盾の前に、全然落着きを失つたのは、気の毒ではあるが無理もない。
それ以来去来は何をするのにも、この満足と悔恨との扞挌から、自然と或程度の掣肘を感じ出した。
将に支考の眼の中に、偶然でも微笑の顔が見える時は、反つてその満足の自覚なるものが、一層明白に意識されて、その結果愈自分の卑しさを情なく思つた事も度々ある。
それが何日か続いた今日、かうして師匠の枕もとで、末期の水を供する段になると、道徳的に潔癖な、しかも存外神経の繊弱な彼が、かう云ふ内心の矛盾の前に、全然落着きを失つたのは、気の毒ではあるが無理もない。