俊才、嚢中の錐の如き彼は、直に部将井上九郎光盛をして赤旗を立てて前ましめ、彼自らは河を済り、戦鼓をうつて戦を挑み、平軍の彼が陣を衝かむとするに乗じて光盛等をして、赤旗を倒して白旗を飜し、急に敵軍を夾撃せしめて大に勝ち、遂に長茂をして越後に走らしめたり。
是実に、淮陰侯が、井陘に成安君を破れるの妙策、錐は遂に悉く穎脱し了れる也。
越えて八月、宗盛、革命軍の軍鋒、竹を破るが如きを聞き、倉皇として北陸道追討の宣旨を請ひ、中宮亮平通盛、但馬守平経正等を主将とせる征北軍を組織し、彼が奔流の如き南下を妨げしめたり。