我木曾冠者義仲が其燃ゆるが如き血性と、烈々たる青雲の念とを抱いて何等の譎詐なく、何等の矯飾なく、人を愛し天に甘ンじ、悠然として頭顱を源家の呉児に贈るを見る、彼が多くの短所と弱点とを有するに関らず、吾人は唯其愛すべく、敬すべく、慕ふべく、仰ぐべき、真個の英雄児たるに愧ぢざるを想見せずンばあらず。
岳鵬挙の幽せらるゝや、背に尽忠報国の大字を黥し、笑つて死を旦夕に待ち、項羽の烏江に戮せらるゝや、亭長に与ふるに愛馬を以てし、故人に授くるに首級を以てし、自若として自ら刎ね、王叔英の燕賊に襲はるゝや、沐浴して衣冠を正し南拝して絶命の辞を書し、泰然として自縊して死せり。
彼豈之に恥ぢむや。