というのは、その旅館の前の、下水の蓋を兼ねた、御影石の敷石の上に、余程注意深い人でなければ、眼にとまらない様な、一つの煙草の吸殻が落ちていた。
そして、何んと、それが刑事の探し廻っていた所の埃及煙草と同じものであったのである。
さて、この一つの煙草の吸殻から足がついて、さしもの紳士盗賊も遂に獄裡の人となったのであるが、その煙草の吸殻から盗賊逮捕までの径路に一寸探偵小説じみた興味があるので、当時のある新聞には、続き物になって、その時の何某刑事の手柄話が載せられた程であるが――この私の記述も、実はその新聞記事に拠ったものである――私は茲には、先を急ぐ為に、極く簡単に結論丈けしかお話している暇がないことを遺憾に思う。