読者も想像されたであろう様に、この感心な刑事は、盗賊が工場の支配人の部屋に残して行った所の、珍らしい煙草の吸殻から探偵の歩を進めたのである。
そして、各区の大きな煙草屋を殆んど廻り尽したが、仮令おなじ煙草を備えてあっても、埃及の中でも比較的売行きのよくない、FIGARO を最近に売ったという店は極く僅かで、それが悉く、どこの誰それと疑うまでもない様な買手に売られていたのである。
ところが愈々最終という日になって、今もお話した様に、偶然にも、飯田橋附近の一軒の旅館の前で、同じ吸殻を発見して、実は、あてずっぽうに、その旅館に探りを入れて見たのであるが、それがなんと僥倖にも、犯人逮捕の端緒となったのである。