私の作った椅子は、どんな難しい註文主にも、きっと気に入るというので、商会でも、私には特別に目をかけて、仕事も、上物ばかりを、廻して呉れて居りました。
そんな上物になりますと、凭れや肘掛けの彫りものに、色々むずかしい註文があったり、クッションの工合、各部の寸法などに、微妙な好みがあったりして、それを作る者には、一寸素人の想像出来ない様な苦心が要るのでございますが、でも、苦心をすればした丈け、出来上った時の愉快というものはありません。
生意気を申す様ですけれど、その心持ちは、芸術家が立派な作品を完成した時の喜びにも、比ぶべきものではないかと存じます。