車に積み込む時、一人の人夫が「こいつは馬鹿に重いぞ」と怒鳴りましたので、椅子の中の私は、思わずハッとしましたが、一体、肘掛椅子そのものが、非常に重いのですから、別段あやしまれることもなく、やがて、ガタガタという、荷車の振動が、私の身体にまで、一種異様の感触を伝えて参りました。
非常に心配しましたけれど、結局、何事もなく、その日の午後には、もう私の這入った肘掛椅子は、ホテルの一室に、どっかりと、据えられて居りました。
後で分ったのですが、それは、私室ではなくて、人を待合せたり、新聞を読んだり、煙草をふかしたり、色々の人が頻繁に出入りする、ローンジとでもいう様な部屋でございました。