夜々の外出には、注意に注意を加えて、少しも物音を立てず、又人目に触れない様にしていましたので、当然、危険はありませんでしたが、それにしても、数ヶ月という、長い月日を、そうして少しも見つからず、椅子の中に暮していたというのは、我ながら実に驚くべき事でございました。
殆ど二六時中、椅子の中の窮屈な場所で、腕を曲げ、膝を折っている為に、身体中が痺れた様になって、完全に直立することが出来ず、しまいには、料理場や化粧室への往復を、躄の様に、這って行った程でございます。
私という男は、何という気違いでありましょう。