買手はY市から程遠からぬ、大都会に住んでいた、ある官吏でありました。
道具屋の店先から、その人の邸まで、何里かの道を、非常に震動の烈しいトラックで運ばれた時には、私は椅子の中で死ぬ程の苦しみを嘗めましたが、でも、そんなことは、買手が、私の望み通り日本人であったという喜びに比べては、物の数でもございません。
買手のお役人は、可成立派な邸の持主で、私の椅子は、そこの洋館の、広い書斎に置かれましたが、私にとって非常に満足であったことには、その書斎は、主人よりは、寧ろ、その家の、若く美しい夫人が使用されるものだったのでございます。