が、お話をその方に進める前に、主人公の郷田三郎が、素人探偵の明智小五郎――この名前は多分御承知の事と思います。
――と知り合いになり、今まで一向気附かないでいた「犯罪」という事柄に、新しい興味を覚える様になったいきさつについて、少しばかりお話して置かねばなりません。
二人が知り合いになったきっかけは、あるカフェで彼等が偶然一緒になり、その時同伴していた三郎の友達が、明智を知っていて紹介したことからでしたが、三郎はその時、明智の聰明らしい容貌や、話しっぷりや、身のこなしなどに、すっかり引きつけられて了って、それから屡々彼を訪ねる様になり、又時には彼の方からも三郎の下宿へ遊びにやって来る様な仲になったのです。