同僚を殺害して、その死体を実験室の竈で灰にして了おうとした、ウェブスター博士の話、数ヶ国の言葉に通暁し、言語学上の大発見までしたユージン・エアラムの殺人罪、所謂保険魔で、同時に優れた文芸批評家であったウエーンライトの話、小児の臀肉を煎じて義父の癩病を治そうとした野口男三郎の話、さては、数多の女を女房にしては殺して行った所謂ブルーベヤドのランドルーだとか、アームストロングなどの残虐な犯罪談、それらが退屈し切っていた郷田三郎をどんなに喜ばせたことでしょう。
明智の雄弁な話しぶりを聞いていますと、それらの犯罪物語は、まるで、けばけばしい極彩色の絵巻物の様に、底知れぬ魅力を以て、三郎の眼前にまざまざと浮んで来るのでした。
明智を知ってから二三ヶ月というものは、三郎は殆どこの世の味気なさを忘れたかと見えました。