おもちゃ箱をぶちまけて、その上から色々のあくどい絵具をたらしかけた様な浅草の遊園地は、犯罪嗜好者に取っては、こよなき舞台でした。
彼はそこへ出かけては、活動小屋と活動小屋の間の、人一人漸く通れる位の細い暗い路地や、共同便所の背後などにある、浅草にもこんな余裕があるのかと思われる様な、妙にガランとした空地を好んでさ迷いました。
そして、犯罪者が同類と通信する為ででもあるかの様に、白墨でその辺の壁に矢の印を書いて廻ったり、金持らしい通行人を見かけると、自分が掏摸にでもなった気で、どこまでもどこまでもそのあとを尾行して見たり、妙な暗号文を書いた紙切れを――それにはいつも恐ろしい殺人に関する事柄などを認めてあるのです――公園のベンチの板の間へ挟んで置いて、樹蔭に隠れて、誰かがそれを発見するのを待構えていたり、其外これに類した様々の遊戯を行っては、独り楽むのでした。