そして、犯罪者が同類と通信する為ででもあるかの様に、白墨でその辺の壁に矢の印を書いて廻ったり、金持らしい通行人を見かけると、自分が掏摸にでもなった気で、どこまでもどこまでもそのあとを尾行して見たり、妙な暗号文を書いた紙切れを――それにはいつも恐ろしい殺人に関する事柄などを認めてあるのです――公園のベンチの板の間へ挟んで置いて、樹蔭に隠れて、誰かがそれを発見するのを待構えていたり、其外これに類した様々の遊戯を行っては、独り楽むのでした。
彼は又、屡々変装をして、町から町をさ迷い歩きました。
労働者になって見たり、乞食になって見たり、学生になって見たり、色々の変装をした中でも、女装をすることが、最も彼の病癖を喜ばせました。