その為には、彼は着物や時計などを売り飛ばして金を作り、高価な鬘だとか、女の古着だとかを買い集め、長い時間かかって好みの女姿になりますと、頭の上からすっぽりと外套を被って、夜更けに下宿屋の入口を出るのです。
そして、適当な場所で外套を脱ぐと、或時は淋しい公園をぶらついて見たり、或時はもうはねる時分の活動小屋へ這入って、態と男子席の方へまぎれ込んで見たり、はては、きわどい悪戯までやって見るのです。
そして、服装による一種の錯覚から、さも自分が妲妃のお百だとか蟒蛇お由だとかいう毒婦にでもなった気持で、色々な男達を自由自在に飜弄する有様を想像しては、喜んでいるのです。