何事がなくても、こうした興味がある上に、そこには、往々にして、滑稽な、悲惨な、或は物凄い光景が、展開されています。
平常過激な反資本主義の議論を吐いている会社員が、誰も見ていない所では、貰ったばかりの昇給の辞令を、折鞄から出したり、しまったり、幾度も幾度も、飽かず打眺めて喜んでいる光景、ゾロリとしたお召の着物を不断着にして、果敢ない豪奢振りを示している、ある相場師が、いざ床につく時には、その、昼間はさも無雑作に着こなしていた着物を、女の様に、丁寧に畳んで、床の下へ敷くばかりか、しみでもついたのと見えて、それを丹念に口で嘗めて――お召などの小さな汚れは、口で嘗めとるのが一番いいのだといいます――一種のクリーニングをやっている光景、何々大学の野球の選手だというニキビ面の青年が、運動家にも似合わない臆病さを以て、女中への附文を、食べて了った夕飯のお膳の上へ、のせて見たり、思い返して、引込めて見たり、又のせて見たり、モジモジと同じことを繰返している光景、中には、大胆にも、淫売婦(?
を引入れて、茲に書くことを憚る様な、すさまじい狂態を演じている光景さえも、誰憚らず、見たい丈け見ることが出来るのです。