お伽噺に隠れ蓑というものがありますが、天井裏の三郎は、云わばその隠れ蓑を着ているも同然なのです。
若しその上、他人の部屋の天井板をはがして、そこへ忍び込み、色々ないたずらをやることが出来たら、一層面白かったでしょうが、三郎には、その勇気がありませんでした。
そこには、三間に一箇所位の割合で、三郎の部屋のと同様に、石塊で重しをした抜け道があるのですから、忍び込むのは造作もありませんけれど、いつ部屋の主が帰って来るか知れませんし、そうでなくとも、窓は皆、透明なガラス障子になっていますから、外から見つけられる危険もあり、それに、天井板をめくって押入れの中へ下り、襖をあけて部屋に這入り、又押入れの棚へよじ上って、元の屋根裏へ帰る、その間には、どうかして物音を立てないとは限りません。