これはうまい工合だと思いながら、その節穴から下を覗いて見ますと、外の隙間の様に、縦には長くても、幅はせいぜい一分内外の不自由なのと違って、下側の狭い方でも直径一寸以上はあるのですから、部屋の全景が、楽々と見渡せます。
そこで三郎は思わず道草を食って、その部屋を眺めたことですが、それは偶然にも、東栄館の止宿人の内で、三郎の一番虫の好かぬ、遠藤という歯科医学校卒業生で、目下はどっかの歯医者の助手を勤めている男の部屋でした。
その遠藤が、いやにのっぺりした虫唾の走る様な顔を、一層のっぺりさせて、すぐ目の下に寝ているのでした。