あれから、この管轄の警察署長を訪ねて、ここへ臨検した一人の刑事から、詳しく当時の模様を聞くことが出来たが、その話によると、莫児比𣵀の瓶が煙草の箱の中にころがっていて、中味が巻煙草にこぼれかかっていたというのだ。
警察の人達はこれに別段注意を払わなかった様だが、考えて見れば甚だ妙なことではないか、聞けば、遠藤は非常に几帳面な男だというし、ちゃんと床に這入って死ぬ用意までしているものが、毒薬の瓶を煙草の箱の中へ置くさえあるに、而も中味をこぼすなどというのは、何となく不自然ではないか。
そこで、僕は益々疑いを深くした訳だが、ふと気附いたのは君の遠藤の死んだ日から煙草を吸わなくなっていることだ。