私はその晩も、例によって、一杯の冷しコーヒーを十分もかかって飲みながら、いつもの往来に面したテーブルに陣取って、ボンヤリ窓の外を眺めていた。
さて、この白梅軒のあるD坂というのは、以前菊人形の名所だった所で、狭かった通りが、市区改正で取拡げられ、何間道路とかいう大通になって間もなくだから、まだ大通の両側に所々空地などもあって、今よりずっと淋しかった時分の話だ。
大通を越して白梅軒の丁度真向うに、一軒の古本屋がある。
私はその晩も、例によって、一杯の冷しコーヒーを十分もかかって飲みながら、いつもの往来に面したテーブルに陣取って、ボンヤリ窓の外を眺めていた。
さて、この白梅軒のあるD坂というのは、以前菊人形の名所だった所で、狭かった通りが、市区改正で取拡げられ、何間道路とかいう大通になって間もなくだから、まだ大通の両側に所々空地などもあって、今よりずっと淋しかった時分の話だ。
大通を越して白梅軒の丁度真向うに、一軒の古本屋がある。