というのは、私が近頃この白梅軒で知合になった一人の妙な男があって、名前は明智小五郎というのだが、話をして見ると如何にも変り者で、それで頭がよさ相で、私の惚れ込んだことには、探偵小説好なのだが、その男の幼馴染の女が今ではこの古本屋の女房になっているという事を、この前、彼から聞いていたからだった。
二三度本を買って覚えている所によれば、この古本屋の細君というのが、却々の美人で、どこがどういうではないが、何となく官能的に男を引きつける様な所があるのだ。
彼女は夜はいつでも店番をしているのだから、今晩もいるに違いないと、店中を、といっても二間半間口の手狭な店だけれど、探して見たが、誰れもいない。