沖の島の属する郡には、政府の鉄道は勿論私設の軽便鉄道や、当時は乗合自動車さえ通っていず、殊に島に面した海岸は、百戸に充たぬ貧弱な漁村がチラホラ点在しているばかりで、その間々には人も通わぬ断崖がそそり立っていて、謂わば文明から切り離された、まるで辺鄙な所だものですから、その様な風変りな大作業が始っても、その噂は村から村へと伝わる丈けで、遠くに行くに従って、いつしかお伽噺の様なものになって了い、仮令附近の都会などに、それが聞えても、高々地方新聞の三面を賑わす程のことで済んで了いましたが、若しこれが都近くに起った出来事だったら、どうして、大変なセンセーションを捲き起したに相違ありません。
それ程、その作業は変てこなものだったのです。
流石に附近の漁師達は怪しまないではいられませんでした。