彼等が双方とも、余り教室へ顔を見せない方だったのと、人見廣介が軽度の近眼で、始終眼鏡を用いていたのとで、二人顔を合せる機会が少く、顔を合せた所で一方は眼鏡がある為、遠方からでも十分区別することが出来たものですから、さしたる珍談も起らないで済みましたが、それでも、長い学生生活中には、笑い話の種になる様な事柄が一二度ならずありました。
それ程彼等はよく似ていたのです。
その所謂双生児の片割が死んだというのですから、人見廣介に取っては、外の同窓の訃報に接したよりは、いくらか驚きが強かった訳ですが、でも、彼は当時から、まるで自分の影の様な菰田に対して、彼等が余りに似過ぎている為に却って嫌悪の情を抱いていた位で、無論悲しみを感ずるという程ではありませんでした。