それに、頭髪の恰好を極度に換え、服装を工夫すれば、もう七分通りは変装の目的を達することが出来たのですが、彼は更に念には念を入れて、ふくみ綿によって頬から顎の線を変え、つけ髭によって口の特徴を隠すことにしました。
その上歩きっぷりでも換えることが出来たなら九分九厘人見廣介はなくなって了うのです。
彼は変装については、日頃から一つの意見を持っていて、鬘や顔料を使用するなどは、手数がかかるばかりでなく、却って人目を惹く欠点があり、迚も実用に適しないけれど、こうした簡単な方法を用いるならば、日本人だって、まんざら変装出来ないものでもないと、信じていたのでした。