彼は、その薄明の中で、出来る丈け手早く、菰田の墓を、さも死人が蘇生して、内部から棺を破って這い出した体にしつらえ、足跡を残さぬ様に注意しながら、元の生垣の隙間から、外の畦道へと抜け出し、鍬の始末をして、元の変装姿のまま、町の方へと急ぐのでした。
それから一時間もすると、彼は、墓場から蘇生した男が、よろよろと自宅への道をたどり、三分一も歩かぬ内に息切れがして、道ばたに行き倒れた体を装って、とある森の茂みのかげに、土まみれの経帷子の姿を、横えて居りました。
丁度一晩食わず飲まずで働き通したのですから、顔面にも適度の憔悴が現れ、彼のお芝居を一層まことしやかに見せるのでした。