始めの計画では、死体を始末すると、すぐに経帷子に着換え、寺の庫裏にたどりついて、ホトホトとそこの雨戸を叩く予定だったのですが、死体を見ると、この地方の習慣と見え、あの古くさい剃髪の儀式によって、頭も髭も綺麗に剃られていたものですから、彼も亦同じ様に頭を丸めて置く必要があったのです。
で、彼は町はずれの田舎めいた商家の中から金物屋を探し出して、一挺の剃刀を買い、森の中に隠れて、苦心をして、自ら髪を剃らなければなりませんでした。
それは例の巧みな変装を解かない前ですから、理髪店に入ったところで滅多に疑われる筈はなかったのですけれど、早朝のことで、朝の遅い理髪店は、まだ店を開いていなかったのと、万一を慮る用心とから、剃刀を買うことにしたのでした。