そして、すっかり頭を剃り、経帷子と着換え、死人の手から抜取った指環をはめ、脱いだ衣類其他を、森の奥の窪地で焼き捨て、その灰の始末をつけて了った時分には、もう太陽が高く昇って、森の外の街道には、絶えず、チラホラと人通りがして、今更ら隠れ家を出て、寺に帰りもならず、止むを得ず、見つけ出すのに骨の折れる様な、併し街道からは余り距たらぬ、茂みの影に、気を失ったつもりで、横わっている外はなかったのです。
街道に沿って小さな流れがあり、その流れに枝を浸す様にして、葉の細い灌木が密生し、そこからずっと森になって、脊の高い松や杉などが、まばらに生えているのです。
彼は、往来から見えぬ様に用心しながら、その灌木の向う側に、身体をくっつける様にして、息を殺して横になっていました。