彼はそうして、偽阿房を装いながら、失敗する度に何かしら覚込む方法によって、瞬く内に、菰田家内外の、種々の関係に通暁することが出来ました。
そこで、これなれば先ず大丈夫という、医師の折紙がついて、丁度彼が菰田家に入ってから半月目には、もう盛大な床上げのお祝いが開かれることになったのです。
その酒宴の席でも、彼は、そこに集った親族、菰田家に属する各種事業の主脳者、総支配人を始め重だった雇人などの、気をゆるした雑談の裏から、夥しい知識を得ることが出来たのですが、さて、そのお祝いの翌日から、彼は愈々、彼の大理想の実現に向って、その第一歩を踏み出す決心をしたのでした。