町の芸者や半玉なども数名座に侍ったのですが、彼女等もそれぞれ引取って了い、客は菰田邸に泊るものもあれば、それから又どこかへ姿を隠すものもあり、座敷は引汐の跡の様で、杯盤の乱れた中に一人酔いつぶれていたのが廣介、そして、それを介抱したのが彼の妻の千代子だったのです。
その翌朝、意外にも、七時頃にもう起き出でた廣介は、ある甘美なる追憶と、併し名状すべからざる悔恨とに、胸をとどろかせながら、幾度も躊躇したのち、跫音を盗む様にして千代子の居間へ入ったのでした。
そして、そこに、青ざめて身動きもせず坐ったまま、脣をかんで、じっと空を見つめている、まるで人が違ったかと思われる、千代子の姿を発見したのです。