そして、この調子なればと一安心はしたものの、併し、そののちというものは、彼の身の廻りのこと一切を、小間使にまかせて、彼女は一度も彼の側によろうとせず、ろくろく口も利かない有様を見ますと、やっぱり油断がならず、どうかした調子で、あの秘密が外部に洩れたなら、いやいや、仮令外部には洩れずとも、そういう間にも、邸内の召使などに知れ渡っているかも知れたものではない、と思うと、愈々気が気でなく、四日の間躊躇に躊躇を重ねた上、彼は遂に、彼女を殺害することに心を極めたのでありました。
さて、その日の午後、彼は千代子を彼の部屋に呼びよせて、さも何気ない風を装いながら、こんな風に切り出すのでした。
「身体の工合もいい様だから、私はこれから又島へ出掛け様と思うが、今度はすっかり工事が出来上って了うまで帰れまいと思う。