コンクリートの枠に厚い板ガラスを張りつめて、その外部に、強い電燈がとりつけられ、頭の上も、足の下も、右も左も、二三間の半径で、不思議な水底の光景が、手に取る様に眺められます。
ヌメヌメとした黒い岩石、巨大な動物の鬣の様に、物凄く揺れる様々の海草、陸上では想像も出来ない、種々雑多の魚類の游泳、八本の足を車の様に拡げ、不気味ないぼいぼをふくらまして、ガラス板一杯に吸いついた大章魚、水の中の蜘蛛の様に、岩肌に蠢く海老、それらが強烈な電光を受けながら、水の厚みにぼかされて、遠くの方は、森林の様に青黒く、そこにえたいの知れぬ怪物共がウジャウジャとひしめき合うかと思われて、その悪夢の様な光景は、陸上ではまるで想像も出来ない感じでした。
「どうだい、驚くだろう。