電燈の届かぬ遠くの方の魚達は、その目の玉ばかりが、夏の夜の川面を飛びかう螢の様に、縦横に、上下に、彗星の尾を引いて、あやしげな燐光を放ちながら、行違っています。
それが、燈光を慕って、ガラス板に近づく時、闇と光の境を越えて、徐々に、様々の形、とりどりの色彩を、燈下に曝す異様なる光景を何に例えればよいのでしょう。
巨大なる口を真正面に向けて、尾も鰭も動かさず、潜航艇の様にスーッと水を切って、霧の中のおぼろな姿が、見る見る大きくなり、やがて、活動写真の汽車の様に、こちらの顔にぶっつかる程も、間近く迫って来るのです。