或は上り或は下り、右に左に屈折して、ガラスの道は、島の沿岸を数十間の間続いています。
上りつめた時には、海面とガラスの天井とがすれずれになって、電燈の力を借らずとも、あたりの様子が手に取る様に眺められ、下り切った時には、幾百燭光の電燈も、僅かに一二尺の間を、ほの白く照し出すに過ぎなくて、その彼方には地獄の闇が、涯知らず続いているのです。
海近く育って、見慣れ聞慣れてはいても、こうして、親しく海底を旅した事なぞは、いうまでもなく始めてだものですから、千代子は、その不思議さ、毒々しさ、いやらしさ、それにも拘らず異様にも引入れられる様な人外境の美しさ、怖い程も鮮かな海底の別世界に、ふと、名状の出来ない誘惑の様なものを感じたのは、まことに無理ではなかったのです。